学習者をみる教科教育研究


 臨床教科教育学会では学習者をみることによって研究を進めます。当たり前のようですが、学術研究においては必ずしも当たり前ではありません。教育学は歴史のある学問です。その歴史的背景から、「諸外国の教育との比較研究」、「我が国および諸外国の教育史研究」、「教育哲学研究」等の理論的研究が盛んに行われておりました。それらの研究での分析対象の主なるものは文献です。学習者を分析対象とする場合は、二次資料化(文献化)された学習者を対象としていました。
 教科教育研究では、その教科の背景となる学問の基礎的研究により教具・実験法を開発する研究は少なくありません。しかし、背景となる学問の基礎的研究によって 教具・実験法を開発しますが、それらを実際に実施して、その有効性を実証するまでに至らない研究は少なくありません。
 心理学の研究手法を利用して、教科を学ぶ学習者の姿を明らかにする研究があります。それらの研究では、比較的統制された条件下での学習者の姿を分析し、その結果を現実の教室に適用することを意図していました。しかし、現実の教室は多様な要因が複雑に絡み合います。それらを別々に分離した 、統制下の学習者の姿の総和が、現実の教室における学習者の姿を必ずしも示すものではありません。
 現場における実践研究においては、生の学習者を分析する研究は行われていました。しかし、その分析において学術研究において確立された理論、分析の手法等が利用されることは余りありませんでした。 しかし学術研究によって明らかにされた、現場教師に新たな視点を与える理論、複雑模糊の学習者の姿を整理する分析手段はあります。
 我々は、現実の教師が目にしている、また、学習者自身が目にしている、「生」の学習者(および学習者集団)の姿を分析する「新たな学術研究」を構築したいと希望しております。それによって、学校現場における現実の教育に間接的・理論的ではなく直接的に影響を与える研究成果をあげたいと希望しております。
 先に述べたように、現実の教室は多様な要因が絡み合った複雑な系を形成しています。抽象化、単純化によって進展していった従来の学術研究の手法をそのまま適用することはできません。しかし、学術研究の歴史の中で培った理論・分析の手法は必ず利用できると確信しております。難しい課題ではありますが、それを推進するだけの価値は十分にあると考えています。そして、その鍵が「生の学習者をみる」ことにあると我々は考えました。


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